皆様こんにちは。
いつもブライトリングブティック京都のブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
2025年も残すところあとわずか…。
今年は皆様にとってどのような年でしたか? ブライトリングは昨年に創業140周年を迎え、今年はさらなる飛躍の年に!という一年でした。
しかしながら中国の景気減退やトランプショックなど日本のみならず世界中が混乱した一年の幕開けでもありました。
そんな混迷な一年を振り返ってみるとブライトリングの「競争力」が際立った一年だったと感じます。
本年の振り返りも踏まえて、ブライトリングの「真価」とはなにかご紹介していこうと思います。
価格改定を1度のみで乗り切った舞台裏
近年、「価格改定」は最も注目を集めるトピックスのひとつとなっています。
それは決して時計業界だけに限った話ではありません。例えば、自販機で購入するペットボトルのコーラが200円になった際には、多くのネットニュースやSNSで話題となり、身近なところでも価格上昇を強く実感された方も多いのではないでしょうか。

その背景には、原材料価格の高騰をはじめ、物流コストや人件費の上昇など、複数の要因が複雑に絡み合っています。この流れは現時点では明確な歯止めが見えず、今後も続いていくと考えられています。
当然ながら、時計業界もその影響を免れることはできません。
価格改定の際に「○○%アップ」といった表記を目にする機会も増え、皆様も次第に見慣れてこられたのではないでしょうか。

誰もが等しく影響を受けるこの「価格改定」ですが、その受け止め方や対処方法はブランドごとに大きく異なります。
例えば、年間に数回、5%前後の価格改定を段階的に行うブランドもあれば、「価格改定」という表現は用いず、新作発表のタイミングで実質的に価格を引き上げる手法を取るブランドも存在します。
とはいえ、2025年の“台所事情”が決して楽ではないのも事実です。
実際、2025年1月時点で1gあたり13,676円だった金相場は、同年11月には20,454円まで上昇し、実に約65%もの値上がりを記録しています。

さらに世界経済に目を向けると、中国市場では前年比で20〜30%以上の販売減となっているブランドも珍しくありません。本数が伸び悩む中、利益を確保するために価格へ転嫁せざるを得ない状況に置かれているのが現実です。
加えて、スイスフランの高騰も無視できない要素です。現在は1スイスフラン=195円前後を推移しており、5年前の1スイスフラン=116円と比較すると、こちらも約60%以上の上昇となっています。
これら複数の要因が重なり合い、時計業界全体にこれまで以上の負荷がかかっているのが、今の市場環境と言えるでしょう。

今年を語るうえで欠かせない出来事のひとつが、いわゆる「トランプショック」とも呼ばれた関税政策です。
この動きは時計業界にも大きな緊張感をもたらし、多くのブランドや関係者がその行方を固唾をのんで見守る状況となりました。
当初、もし関税がそのまま撤回されなければ、世界規模で15%以上の値上げは避けられないとまで言われており、市場全体が一気に冷え込む可能性すら懸念されていました。価格への影響だけでなく、流通や販売戦略の見直しを迫られるブランドも少なくなかったのが実情です。

最終的には関税率が15%に落ち着き、最悪のシナリオは回避されたものの、「影響が小さくなった」と言い切れる状況ではありません。すでに原材料高や為替変動を抱えている中での追加負担であることに変わりはなく、業界にとっては依然として重たい課題としてのしかかっています。
こうした外的要因が次々と押し寄せる一年だったからこそ、各ブランドがどのような判断を下し、どのように価値を守ろうとしているのか。その姿勢が、これまで以上に問われた一年だったと言えるでしょう。

そのような厳しい市場環境の中で、ブライトリングが選択した姿勢は非常に印象的なものでした。
ブライトリングの2025年における価格改定は、1月に実施された一度のみ。ここまで経済情勢が大きく動いた年は極めて稀であり、状況だけを見れば、価格を引き上げるタイミングは幾度となく存在していたと言えるでしょう。
実際、海外市場に目を向けると価格はすでに上昇しており、多くの国では日本の定価と比較して約1.3倍という設定が一般的になっています。それにもかかわらず、日本市場においては安易な追加値上げを行わず、年内は一度の改定にとどめた判断は、ブランドの姿勢を象徴しているように感じられます。

短期的な利益を追うのではなく、長く寄り添うブランドであることを選んだブライトリング。
その選択こそが、混迷の一年の中で際立った「強さ」であり、信頼の根拠なのかもしれません。
未来へ繋げるキャリバーの登場
さらに注目すべきは、このような厳しい状況下において、ブライトリングがムーブメント、すなわちキャリバーに関して新たに3つの取り組みを打ち出した点です。
一般的に、景気が不透明な局面では新作の投入や開発スピードを緩める判断が取られがちであり、特に中核となるキャリバーの刷新や拡充は、大きなリスクを伴う決断と言えます。

それにもかかわらず、ブライトリングは当初の計画を崩すことなく、あえて3つの「試金石」となる取り組みを市場に投入しました。これは短期的な売上や反応だけを見た判断ではなく、数年先を見据えた明確な意思表示であり、ブランドとしての覚悟が感じられる一手です。
不確実な時代だからこそ、足元を固め、時計の心臓部であるキャリバーに投資する。その姿勢は、ブライトリングが単なるトレンドや市況に左右される存在ではなく、長期的な価値を築くブランドであることを強く印象づける出来事だったと言えるでしょう。
「キャリバーB19」の市販化
このキャリバーは、2024年の創業140周年を記念して製作されたパーペチュアルカレンダーモデルに初めて搭載されましたが、当時は一般販売されず、一部の限られた商談会でのみ購入可能という、極めて特別な存在でした。
それから約半年後、そのキャリバーB19がステンレススチールケースをまとい、待望の形で復活を果たします。記念モデルにとどめることなく、実際に多くの方の手に届けるという判断は、ブライトリングのものづくりに対する自信の表れとも言えるでしょう。


このパーペチュアルカレンダーは、名機として高い評価を受ける「B01」をベースに開発された完全自社製キャリバーです。複雑機構でありながら、日常使いにおける実用性や信頼性をしっかりと確保している点は、ブライトリングらしさが色濃く反映されています。
高度な技術の積み重ねによって、複雑機構の内製化という大きな壁を乗り越えたキャリバーB19。
それは単なる記念的存在ではなく、ブライトリングの技術が次のステージへ進んだことを示す、象徴的なムーブメントと言えるでしょう。
スペックそのままにB01の小径化
実はこの出来事は、あまり大きく語られることのない“静かな大事件”とも言えるでしょう。
今後の展開はまだ未知数ではあるものの、時計の小径化が進む現在のトレンドにおいて、基幹キャリバーの基本設計やスペックを維持したまま小径化を実現できたことは、極めて大きな一歩となり得ます。
一般的に、新たなキャリバーを一から設計・開発するには、少なくとも3年程度の期間を要すると言われています。その点、既存の基幹キャリバーを発展させることで、開発に伴うタイムラグを最小限に抑え、同時に物価上昇やコスト増の影響を受けにくい体制を構築できた点は、戦略的にも非常に優れています。


さらに、高い信頼性と実績を誇るB01をベースとしていることで、ユーザーにとっての安心感は言うまでもなく、将来的なメンテナンス性の高さも確保されています。
新しさと実用性、そして長期的な視点を見事に両立させたこの判断は、ブライトリングの技術力と現実的なものづくり思想を象徴する好例と言えるでしょう。
完全自社3針キャリバーB31の登場
「ブライトリングといえばクロノグラフ」――そんなイメージが強かった時代に、新たな変革をもたらしたのが新キャリバー「B31」です。
このムーブメントは、これまで供給面で制約のあった3針モデルにおいて、外部に依存せず、完全自社製での製造を可能にしたという点で、極めて大きな意味を持っています。


従来はケニッシ製ムーブメントに頼らざるを得なかったことで、生産本数や展開モデルに一定の限界がありました。しかしB31の登場により、ブライトリングは3針ムーブメントにおいても主導権を自らの手に取り戻したと言えるでしょう。
現時点では、スーパーオーシャン ヘリテージとトップタイムのみに搭載されていますが、今後、汎用ムーブメントを採用してきたモデルがリニューアルされるタイミングで、高性能なB31へと切り替わっていく可能性も十分に考えられます。その広がりは、ブランドの将来像を大きく左右するはずです。

さらに注目したいのが、機械式時計の心臓部とも言える「テンプ」に、フリースプラング方式を採用している点です。高度な技術と精密な調整を要するこの構造は、精度の安定性と耐久性に優れ、まさに長期使用を前提とした設計思想の表れ。
キャリバーB31は、ブライトリングの未来に向けた確かな布石となる存在であることは間違いありません。
豊富な限定モデル
ブランドの「競争力」を測る指標のひとつとして、意外と見逃せないのが限定モデルの存在、そしてその発表数です。
2025年も例年通り、数多くの限定モデルが発表されましたが、その中でも特に大きな話題と注目を集めたのが、世界でも日本のみで展開される「日本限定モデル」でした。
ブライトリングの限定モデルは、単に文字盤の色を変えただけといったものではなく、他国のマーケットとデザインが重複しない、明確なコンセプトを持った仕上がりとなっています。そのため、気になるモデルが登場すると、完売までのスピードが驚くほど早いのも特徴です。
一般的に限定モデルというと、希少性を理由に価格が大きく跳ね上がり、結果として富裕層向けの商品になってしまうケースも少なくありません。しかしブライトリングは、限定でありながらも価格を極端に吊り上げることなく、多くの方が現実的に検討できる価格帯に抑えている点も大きな魅力と言えるでしょう。

とはいえ、限定モデルの数がそのままブランドの力を示す理由は、決して販売本数の話だけではありません。
限定モデルは通常生産品に比べて数量が少なく、デザインや仕様も異なるため、製造は「特別枠」となり、必然的にコストは高くなります。これは時計業界に限らず、どの業界でも共通する構造です。

さらに、売れ残った場合の在庫リスクも無視できません。そうしたリスクやコストを十分に理解したうえで、なお勝算を持って限定モデルを継続的に投入できるブランドこそ、市場での競争力と企画力を備えていると判断されます。
その意味でも、ブライトリングが見せる限定モデルの展開は、ブランドの確かな「強さ」を物語っていると言えるでしょう。
まとめ
ここまで見てきたように、2025年は世界経済の不透明感、原材料高、為替変動、関税問題と、時計業界にとって決して追い風とは言えない一年でした。多くのブランドが価格改定や戦略の見直しを迫られる中、その対応の仕方こそがブランドの本質を浮き彫りにした年だったと言えるでしょう。

ブライトリングは、こうした逆風の中でも価格改定を最小限に抑え、日本市場では1月の一度のみにとどめました。その一方で、キャリバーB19やB31といった中核となるムーブメントへの投資を止めることなく、むしろ将来を見据えた技術革新を着実に進めています。短期的な利益よりも、長く使い続けられる時計づくりを優先する姿勢が、随所に感じられました。

さらに、日本限定モデルをはじめとした限定モデルの展開からも、企画力・生産力・販売力を総合的に兼ね備えたブランドであることが伝わってきます。高いコストとリスクを伴う限定企画を、現実的な価格帯で成立させている点は、ブライトリングの競争力そのものと言っても過言ではありません。

混迷の時代において、守るべきものを守り、投資すべきところには迷わず踏み込む。
2025年を振り返ったとき、ブライトリングの「真価」とは、まさにその一貫した判断力と、揺るがないものづくりの姿勢にあったのではないでしょうか。




