皆様こんにちは。
いつもブライトリングブティック京都のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本日は少しマニアックな内容になりますが、機械式時計の魅力やその緻密な仕組み、さらに取り扱いの際に注意すべきポイントについてご紹介します。時計好きの方も、初心者の方も楽しんでいただける内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください!
そもそも心臓部分ってどのように正確な精度を作るの?
一度は何かしらの形で振り子はご覧になったことがあると思います。
実は何気なく見ていたこの振り子には驚くべき性質を持っています。
それは、「振り子の長さ」が同じなら、おもりの重さや、振幅の大きさに関係なく、周期(振り子が1往復するのにかかる時間)は同じになることです。
機械式時計の心臓部分のテンプは形こそ違いますがこの法則を応用しています。
どのように応用している?
機械式時計の心臓部は、「調速機」と「脱進機」の2つに大別されます。脱進機は主ゼンマイから伝わる力を制御し、歯車が一定の間隔で進むように調整する役割を担っています。一方、調速機は時計の時間精度を保つため、一定のリズムで動作し、時間を正確に刻む役割を果たします。
振り子の原理が応用されているのは、時計の中でも「調速機」と呼ばれる重要な部分です。この調速機は、時計が正確に時を刻むための中心的な仕組みであり、主に「ひげゼンマイ」と「テンプ」の2つの要素で構成されています。以下では、この仕組みについて詳しく解説していきます。
ひげゼンマイ
ひげゼンマイは、極めて細いばね状の部品で、テンプの動きを調整する役割を持っています。この部品は、振動を安定させるための戻る力を提供し、振り子のように規則的な動きを生み出します。特にひげゼンマイの形状や材質は、時計の精度に大きな影響を与えます。
天輪
テンプは小さな車輪状の部品で、時計内部で振り子の役割を果たしています。テンプはひげゼンマイと連動しながら前後に振動し、その振動数が時計の時を刻む速さを決定します。テンプの動きが均一であるほど、時計の精度が向上します。
ひげゼンマイ+天輪=テンプ
振り子の画像でいうところの紐がひげゼンマイでその紐の先で左右に動いている物が天輪というわけです。
ひげゼンマイの開発によって、当時の時計(主に懐中時計)の精度が飛躍的に向上しました。開発前の時計は、1日に約15分もの誤差が生じていましたが、ひげゼンマイの導入により、この誤差は約15秒にまで縮小されました。この精度の向上により、時計には「分針」が取り付けられるようになり、より正確な時刻表示が可能になりました。
この進化は、時間をより正確に管理する必要が高まった社会のニーズに応える画期的な技術革新であり、時計の実用性と信頼性を大きく向上させました。
精度の調整のしかた
時計の精度調整は主に「緩急針」と呼ばれる部分で行われます。振り子の振り幅は紐の長さで決まるため、これを機械式時計に置き換えると、ひげゼンマイの長さを調整することで振り幅を変える仕組みとなります。この調整を行うために考案されたのが「緩急針」というシステムです。
下の画像をご覧いただきますと、ネジの前に「+」と「-」の記号が見えます。
このネジを回すことでひげゼンマイの長さを変更し、精度調整をします。
「+」に回すとひげゼンマイの長さが長くなるため、時計はゆっくり進みます。
紐であればハサミで切って長さを調整できますが、ひげゼンマイは鉄でできているため切るのが難しく、この緩急針を使った微調整方法が採用されています。このシステムにより、ひげゼンマイの長さを切らずに調節できるため、時計の精密な調整が可能となりました。
さらに、ひげゼンマイ自体の製造は非常に高度な技術を要するため、これを生産できる会社は世界でもわずかしか存在しないと言われています。ひげゼンマイの製作は、時計産業における極めて重要かつ高度な職人技術の象徴とされています。
精度が悪くなる主な理由を5つご紹介
機械式時計の精度が悪くなる原因はほとんどがこのテンプに由来しています。
ではどのような内容で精度不良が起こるのか詳しく解説していきます。
①油切れ
機械式時計では、各部品ごとに3~4種類もの専用機械油が使用されています。この機械油は、文字通り「潤滑油」としての役割を果たし、時計内部で部品同士が噛み合う際に発生する摩擦を軽減する重要な役目を担っています。
もし機械油が切れたり劣化したりすると、摩擦が増加して部品の動きが滑らかでなくなり、機械同士のエネルギー伝達が効率的に行えなくなります。この結果、時計の精度が大きく低下してしまいます。
②磁気
近年、機械式時計において特に注目されているのが「磁気」の影響です。磁気は目に見えないものですが、時計の精度に非常に大きな影響を及ぼすことが分かっています。
時計内部では、テンプが規則的に往復運動を繰り返しており、その動きの幅を「振り角」と呼びます。通常、この振り角は約280°前後が理想とされます。例えば、現行のブライトリングの時計では、テンプが1秒間に8回、280°の角度で往復する仕組みとなっています。しかし、磁気の影響を受けると、この振り角が低下してしまうことがあります。振り角が下がると、振り子の幅が変化し、結果として時計の精度に不良が生じてしまいます。
③姿勢差
世界三大複雑機構の一つとして知られる「トゥールビヨン」は、時計が受ける「姿勢差」を解消するために開発された高度な仕組みです。地球上のすべての物体は重力の影響を受けますが、機械式時計も例外ではなく、特にテンプが重力による影響を大きく受けることが分かっています。
この重力による姿勢差を評価するために、機械式時計の精度検査で有名な「COSC認証」(スイス公認クロノメーター規格)では、時計を5つの異なる姿勢で計測します。検査項目には、以下が含まれます:
- 平均日差
- 平均日較差
- 最大日較差
- 垂直方向と水平方向の姿勢差
- 最大姿勢偏差
これらの基準をクリアすることで高精度が保証されますが、それでも特定の角度では振り角が低下し、精度不良が生じる場合があります。この課題を克服するために開発されたトゥールビヨンは、テンプと脱進機をキャリッジと呼ばれるフレームに収め、時計を動作させながら一定時間ごとに回転させることで、重力の影響を平均化します。
④巻き上げ不足
機械式時計の精度不良が生じた際に、最初に注目していただきたいのが「巻き上げ不足」です。機械式時計は、オルゴールと同じ原理で動作し、主ゼンマイが解けることで動力を生み出しています。この主ゼンマイが完全に巻き上げられた状態で時計が動き続ける時間を「パワーリザーブ」と呼びます。
例えば、オルゴールでは主ゼンマイを巻き上げた直後は正しいリズムで音が流れますが、時間が経つにつれて音の間隔が間延びし、最終的には止まります。同様に、機械式時計も主ゼンマイの巻き上げが不十分な場合、動力が安定しないため、時計の精度が悪化することがあります。
特に、日常生活で腕の動きが少ない方や、自動巻き時計を着用しない日が多い場合、巻き上げ不足が生じやすくなります。そのため、手巻き機能を活用してゼンマイを適切に巻き上げたり、定期的に時計を着用することが重要です。
⑤温度変化
機械式時計は、現代の技術向上により温度変化への耐性が強化されましたが、依然として温度の影響を受ける性質があります。特に過去の時計では、ひげゼンマイが金属製であることが一般的であり、この素材が気温の変化によって硬さを変えるため、時計の精度に影響を及ぼしていました。
具体的には、気温が高くなるとひげゼンマイが柔らかくなり、振動が遅くなるため時計が遅れます。一方で、気温が低くなるとひげゼンマイが硬くなり、振動が速くなるため時計が進む傾向が見られました。
現在では、ひげゼンマイの素材として耐温性に優れた合金などの先進的な材料が採用されることが増え、このような温度変化による影響は大幅に軽減されています。これにより、現代の機械式時計は、過去のものに比べて安定した精度を維持できるようになっています。それでも、極端な温度環境に置かれる場合には注意が必要です。
精度が悪くなったと思ったら
時計の時間が少しずれていると感じた際の対処方法を最後にお伝えします。
まず知っておいていただきたいのは、時計の精度を正確に判断するためには1日だけの検査では不十分であるという点です。たとえば、COSC認証では、15日間にわたる精密な検査を経て、その「平均値」が基準内に収まっているかが確認されます。
そのため、時計の精度が悪くなったと感じた場合でも、少なくとも3日程度は様子を見て経過を観察してください。この間に、毎日決まった時間に時刻を確認して記録を取ると、具体的な傾向を把握しやすくなります。
また、お時間がある際には、「ブライトリングブティック京都」へお立ち寄りください。店舗では、時計の精度チェックや磁気抜きを無料で行っています。これにより、正確な診断と適切なメンテナンスを受けることができます。ぜひお気軽にご相談ください。
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